障害者への対応(バリアフリーとは何か?)

・経緯

近年バリアフリーと言う言葉が多用されていますが、実際バリアフリーとは何でしょうか?

段差が無い

有効開口幅(出入口の幅等)が750mm以上

手摺を設ける

は、あくまで基準です。では、実際はどれくらい必要なのか?を自社の提言として(制限があることが多い)改造工事で紹介していきます。

見難いですが、工事前の現況の略図(1階)です。この家では2階のお風呂があり、老人が1階を寝室にしていました。近年になって足が弱くなり2階のお風呂の調子のこともあり、1階にお風呂をつくることになりました。

・問題点

1.お風呂(ユニットバス)をいれる。スペースはあるか?

2.脱衣場のスペースはあるか?

3.通路は車椅子で移動することを考えて広くとりたい。(基準の幅750mmあれば良いではない。)

4.老人が入浴する際に介護が必要である。

5.工事期間中に隣の寝室で老人が寝ている。

左は改修予定の略図です。思った以上にボイラー室が大きかった為、このように計画してみました。

・ポイント

1.ユニットバスのスペースはとれました。また、あえて1.25坪のユニットをいれました。その理由は「広い方が良い」といった漠然としたものではなく、1坪タイプと1.25坪タイプの違いは何か?

浴槽の大きさは両者ほとんど変わりません。違うのは洗い場の面積です。つまり、介護を伴う身障者が入浴するためには、身障者の横に介護者のスペースが必要になります。介護者は身障者の横にしゃがんで身障者の手助けをするスペースが必要なのです。

2.ユニットバスの出入口の建具は三枚引き戸にしました。

折れ戸

引違い戸

三枚引戸
有効開口幅

650

660

638
額縁開口幅

762

1486

1162

YAMAHA仕様による

上記の表を見ていただきますと、引違い戸の方が有効開口幅も広いし額縁開口幅も広い数字ではあります。しかし、引違い戸でも有効開口幅は660mmしかありません。もっと広げるためには、使用の際に建具を外す必要があります。

その時の状況を考えてみてください。大概の介護者は女性です。大きなガラスの入った建具を外して他に置くのは大変な仕事です。三枚引戸なら建具一枚の大きさが小さくなりますので、その負担が小さくなります。また、車椅子を使わないで身障者の横に付き添って、浴室に入る場合、1162mmあれば大丈夫であろうとの自社の判断によって三枚引戸を採用しました。

3.脱衣場と廊下の出入口も上記の理由等により、三枚建ての建具を採用しようとしましたが、計画当初、ちょうど良い物が見つかりませんでした。建具を決める条件は次のようなものです。

A)有効開口幅を広げる為に三枚引き戸かつ建具が連続して動く(単なる三本レールの建具ではなく開閉の際に中央の建具がついてくる物)

B)三枚連続式建具になると、開閉が重くなるので上吊式にする。

C)6尺タイプ(約1635mm)では有効開口幅が1000mm弱になるので、9尺タイプ(約2515mm)を使う。

D)建具の取っ手部分は、大型のバータイプにして掴み易くする。

以上を踏まえた既成の内装建具は「不二サッシのホームウッドシリーズ」でしか見つけられませんでした。

http://www.fujisash.co.jp/

(注意:上記にリンクは張っていません。javaが起動したり、マクロメディア ショックウェープ フラッシュ プラグインが必要だったり、制限が多いと思われるページだからです。掲載内容は良いものです。)

不二サッシホームウッド三連引戸仕様

枠寸法
有効開口寸法
大型手かけ

1635

993.5

2515

1576.5
バータイプ

1635

797

2515

1380

4.通路の幅は出来るだけ大きく(1.1mぐらい)欲しかったのですが、脱衣場のスペースの加減で図面上では937mmとなっています。洗濯パンの最小寸法が640mm、洗面化粧台の最小が600mm、ドア枠の寸法等でギリギリの寸法になっています。この辺りが改造の難しい所です。新築ならば間口を広げれば済む事ですが、改造では簡単にはいきません。また、なぜ、通路の幅が1.1mぐらい欲しいかと言いますと、バリアフリーの基準の有効開口幅750mm、通路の幅780mmというのは車椅子が通れるスペースであって、足の悪くなったばかりの老人等が横に付き添ってもらって歩けるスペースでは無いからです。二人ならんで肩を組んで歩こうとすると、だいたいそれぐらいのスペースは必要になってきます。

以上、主だった経緯と設計です。

・完成

三連引戸
大型の手かけになっていますので、握りやすくなっています。(上野写真)また、開口幅が広いと建具自身の重さも重くなりますが、吊り戸になっているため、開閉が重くはありません。(下の写真)

浴室・出入口

脱衣場から浴室へ入る間には手すりを設けました。また手摺の下にあるのは、浴室と連動した脱衣場の暖房器具です。主に下に向かって温風を送りますので、お風呂から上がった後の足元の冷たさが苦になることはありません。

浴室の出入口も3枚戸になっていますし、一枚の建具は軽いので、女性でも簡単に外せます。
浴室の洗い場です。下に座るのではなく椅子で使えるように蛇口等が高い位置についています。また、椅子に座った障害者の横で介護者が洗う作業も楽になります。

バリアフリーは単純に段差が無い・開口幅が750mm以上では、ついていけないところがまだまだあるはずです。

’00.4.20

’00.8.19改定

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